2008年2月29日金曜日

JATA経営フォーラム2008/マネジメントセッション

藻谷浩介日本政策投資銀行地域振興部参事役の講演は刺激的だった。

「1996年をきっかけに大きな構造変化が起こっている
----アジア向けの輸出が激増し、昨年の輸出額が史上最高に達した一方で、日本国内の小売り販売は1997年以降、減り続けている。---」

藻谷氏は、「景気」の数値の取り方が実態を惑わしていると説明した。

輸出絶好調を理由に『好景気』と言われ、米サブプライム問題を理由に好景気ではない雰囲気になってきたなどと言われるが、「実態は何も変わっていない」と指摘。現に、昨年の輸出額は過去最高、イタリア ・フランス製品の輸入も10年連続で増加している一方で、トヨタは日本国内の 販売台数が3年連続で減少、国内小売り販売は1997年以降減り続けているとし て、「景気という平均をとることは意味がない。空気を読むのではなく、数字を読むべき」と実態を正確に見極める必要性を強調した。

このうち、イタリア・フランス製品の輸入が10年連続で増加している背景には、「一点豪華主義が増えている。ブランド衣料品や食品は引き続き好調」として、日本人の購買行動の変化を指摘。国内販売台数が伸び悩むトヨタでも、 高級車の販売拡大による単価増を図っていると説明した。

また、訪日外国人旅行者の増加や特許料収入の減少を背景に、サービス収支の赤字は年々減っているとし、「遠からずサービス黒字に転じるだろう」と見通した。とくに、旅行収支が赤字なのは日本とドイツだけとして、「本来、中国や韓国と同様に、旅行黒字になってもおかしくない」との見方を示した。

また、リッチなアジア人が急増しており、「アジアが豊かになればなるほど、日本の良いモノが高く売れる」としたが、現状では観光産業が対応しきれていないと指摘。加えて、急成長する中国については、「世界中で日本にしかないビジネスチャンス」との見解を示した。一方、国内小売り販売の低迷については、「バブル崩壊後の失われた10年などと言われるが、実際にはバブル崩壊後も国内小売り販売は落ちておらず、所得も下がっていない」として、1996年をきっかけに大きな構造変化が起こり、 1997年以降小売り販売が減少に転じたと指摘した。

その要因として、藻谷氏は、日本の人口構成の変化を挙げ、「20~59才のモノを買う世代の人口が減っている」ことを指摘した。2000年と2005年の人口増減をみると、首都圏一都三県の場合、人口は106万人増加したが、年代別内訳 をみると、20~59才が32万人減少、0~19才は29万人減少し、一方で60才以上 が151万人も増加したという。

同時期の北海道・東北をみても、20~59才は 33万人減少し、「現役が減っている数は同じ」として、モノを買う現役世代の 減少が売上減に繋がったとの見方を示した。日本全体では、2000年時点の20~59才人口は7100万人だったが、2005年には6898万人へと約200万人減少。これがさらに2035年になると、3割減の4983万人まで減少することが見込まれているとし、国内の小売り販売は右肩下がりに減少していくことを示唆した。

ただし、旅行業の場合、時間と金のあるアクティブシニアが今後10年間でどんどん増えることが強みとし、「ゆっくりお金を使って旅行したいアクティブシニアや、マイカーでしか動かない団塊ジュニアのエージェントになれるか。 業者側の代理店ではなく、“お客様の代理店”になれるか」が明暗を分けるのではないかと予測した。

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